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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「トリポッド」
ジョン・クリストファー著(ハヤカワ文庫)
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2005.05.19

 もうじき公開される、スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演の「宇宙戦争」という映画。これはご存知H・G・ウェルズの傑作で、過去に映画化されたこともありますし、オーソン・ウェルズがラジオドラマ化したときは、聞いた人たちが、本当に宇宙人が襲撃して来たのだと思って、パニックが起きたという逸話もあります。近いところでは「インデペンデンス・デイ」が、このH・G・ウェルズの小説をベースにしているはずです。で、今回公開される「宇宙戦争」も、宣伝ではウェルズ原作、ということになっているのですが、どうやらこの映画にはトリポッドが出てくるらしいんです。  
 三本足で歩き回り、触覚のような、ムチのようなもので攻撃してくる、巨大なやつ「トリポッド」。それ自体が生物なのか、それとも異星人の乗り物なのか。あまりにも強大な敵に、人類はなすすべもなく……  
 そうなると、この映画の原作は「宇宙戦争」ではなく「トリポッド」ということになるのかもしれません。  
 ということで、小説「トリポッド」の感想文のようなモノをお送りいたします。  
 1967年から1968年の間に発表された三部作で、今回は新訳による再刊ということです。実は、特に感想文を書く気はなかったのですが、先に書いたような情報を仕入れちゃったもんで、とりあえず何か書いておこうかな、と。  
 さてこの作品、発表当時は三部作だったのだそうですが、先の三冊を出版した20年後に、作者がそれよりも前の話を追加したそうで、今回の新訳版では、作品内の時間経過にあわせて順番も入れ替えた、四部作の形になっています。  
 内容を読む限り、発表順に読んでみたかったなぁ、という気がしないでもありません。なので、あらすじは発表順に書いてみましょう。  
 時代は、今よりも百年以上先のこと。地球は、異星人に支配されています。支配ったって、普段の生活はそのままで、みんな基本的には普通に生活しています。支配者が宇宙から来た侵略者だ、という意識すらないらしい。  
 過去の歴史は葬り去られていて、かつて栄えていた文明もなくなっています。電気はおろか、蒸気機関もなく、人々は、あちこちに分断された町や村で、牧歌的とも言える生活を営んでいるのです。  
 大人たちは、頭にメッシュ状のキャップをかぶっていて、そのキャップをかぶっていると、時々現れるトリポッドをご主人様とあがめてしまうのです。そんな大人たちに育てられているので、当然子供たちもいつかキャップをかぶって、ご主人様に仕えるのを楽しみにするように教育されています。  
 主人公のウィルはもうじき14歳。14歳になると、キャップをかぶって大人の仲間入りをすることになるのですが、なんだか少し気が進まない。そんなときに偶然、偽のキャップで素性をごまかしている、レジスタンスと知り合います。そして、同じ村で育ったいとことともに、レジスタンスの本部がある、遥か遠くの山(たぶんアルプス)をめざすのです。  
 一巻は長い旅の末レジスタンスの本部に到着するまで、二巻でトリポッドの都市に潜入してその秘密を探って来て、三巻で苦闘の末敵を壊滅するのですが、最後にはちょっと悲しい現実が待ち構えています。でも、ウィルたち若者は、新たなる戦いに立ち上がるのでした。これが本来の三部作の内容です。  
 基本的に子供向けに書かれた作品なので、非常に読みやすいです。  
 随所で過去の遺物、列車だったり車だったり、巨大な都市の廃墟だったりに遭遇して、それがいったいなんなのか、彼らが考えるところは、なかなか興味深いものがあります。  
 さて、この三部作が完結したあとに、作者は長いプロローグとも言うべきお話を書きました。トリポッドが、いったいどうやって地球を征服したのか、レジスタンスたちは、いったいどうやってトリポッドの魔手を逃れたのか。そういった謎が明かされるのです。  
 実は、新訳版の一巻から二巻の間に百年以上の時間が流れているので、二巻と三巻、三巻と四巻の間も、そのぐらいの時間が流れるのか、と思っていたのですが、そんなことはありませんでした。  
 で、読んでいる最中に、かなり昔にあった「ワースト」という漫画を思い出してしまいましたが、それはまあ置いといて。  
 スピルバーグの「宇宙戦争」がもし「トリポッド」が原作だったとして、スピルバーグがシリーズ化するつもりだとすると、この映画のラストで人類は異星人に負けます。ウェルズの「宇宙戦争」が原作の場合、異星人は勝手に死にます(笑)。さて、どっちなんでしょう? 映画観なきゃか?  


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