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[ 小説のようなモノ ]
「間違い電話(第二稿)」の解説
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'99.10.10

 早いもので、初稿を公開してからすでに2年もたっている。その間、何人もの方から感想をいただき、非常にありがたく思っている。中には、「とっても恐かった」という意見の方も何人かいらっしゃったのだが、まあ、おおむね「恐くねぇぞぉ」という批判の声だった。正確にいうと「恐くない」という直接的な批判というよりも、「オチが予想できてしまうのが残念」とか「もう少しひねった方がおもしろくなるだろう」という、好意的な(と、わたしは解釈した)ご意見が多かった。  
 ここで言い訳をするのは、あまり誉められたことではないと思うのだが、この解説はもともと言い訳のためのものなのだ、とひらきなおって言い訳をしてしまうと(と、言い訳の言い訳がくどいのが、明らかに言い分けである証拠なのだが)、初稿はあくまでも、最初に頭に浮かんだアイデアを、何のひねりも加えずにそのまま書いた、いってみればアイデアノートのようなものだったわけで、オチが予想できてしまうのも、あたりまえといえばあたりまえのことかもしれない。今自分で読み返してみても、最初にネタとして思い付いたときほどの怖さは感じない。  
 で、いろいろと考えてみたのだが、なかなかいいオチが考えつかない。  
 いただいた感想の中には「こうしたらどうでしょう?」というような、具体的な例をあげてくれているものもあって、中には「こりゃすごいかもしれない」と思うようなものもあったのだが、まさかそれをそのまま使うわけにはいかないだろう。そうなると、当然それ以上のものを考えなければならなくなるわけで、「感想文のようなモノ」で、プロの手による小説や映画を散々けなしておいて、いまさらいうのも何なのだが、おはなしを作る苦労というのを、つくづく実感させられた。シャレではないが、何の考えもなしに初稿を公開してしまったことを、後悔もした。「小説のようなモノの書き方」の方に「人に意見を求めるな」という項を作ろうと、真剣に考えたほどである。  
 それでもまあ、なんとか無理矢理改定を加えてみた。できの善し悪しの判断は、読んだ方におまかせするとして、このウェッブ・ページの趣旨であるところの「小説のようなモノの書き方」の参考として、改定の段取りを公開しておく。  
 まず「オチがバレバレ」という場合の一番簡単な逃げ道は、そのオチの後にもうひとつオチを入れる、というものである。例えば、夢オチだと思わせておいて、主人公が目を覚まして、ほっとした直後に、もうひとつのオチを入れるとか。ホラー映画なんぞでは、よく使うパターンである。  
 もちろん、これは良い例ではない。はっきりいってあくまでも逃げ道でしかないし、追加のオチもよくあるパターンだったりすると、恥の上塗りになる可能性もある。  
 完璧な対処法はもちろん、誰も考え付かないようなオチを持ってくる、というものなのだが、これはもう、非常に難しいどころの騒ぎではない。誰も考え付かないということは、自分だって考え付かないはずなのだから、というようなギャグは、この際いわないことにして(といいながら、いってしまっているところが、もうどうしようもないのだが)、その手のオチは、実は考えて出てくるものではないのである。特にド素人の場合には、たまたま、パッとひらめいたものが、すごい内容である場合はありえるが、悩んだ末に出てくるものというのは、えてしてその程度のものでしかない場合が多い。  
 で、今回わたしがどうしたかというと、実は楽な逃げ道をとったわけで、誉められたことではない。ただ、その逃げ道も、先にいった手法に、少しひねりを加えてあるので、少しはましかな、と。しかし、そのために全体の構成も変えざるを得なかった。元になった間違い電話の内容は変えたくなかったので、展開に無理があるような気もする。タイトルも「間違い電話」ではしっくり来ないような気がするが、今回はそのまま押し通すことにした。完璧だ、と胸を張るつもりはないが、前の版よりはマシになっているはずである、たぶん。ただ最後のオチは、いらなかったような気がしないでもない。このあたりは、みなさんのご意見をいただければ幸いである。  
 ちなみに、今回の第二版は、改定版とはいえ、初稿に修正をくわえたものではない。読んでいただければわかると思うが、先にもいった通り、全体の構成が大きく変わっているので、結局一から書き直す以外に手がなかったのである。ただし、一部前回の文章をコピーして使っているところもある。これはもちろん、わたしの手抜きなのだが、このあたりが「ワープロを使った小説のようなモノの書き方」の便利なところである。  
 しかも、初稿ではなかばメモ扱いだったこともあり、最初から最後まで、順を追って書いていったの(途中、手直しで行きつ戻りつしたことはしたが)に対し、今回はまずラストの、主人公が目を覚ましたシーンから書き始めた。なにしろ、今回の改定の一番の理由は「オチを変える」ということだったので、ひねり出したオチを忘れないうちに、書き上げたわけだ。それから冒頭に戻って、あとは順を追って書いていったわけである。もちろん、行きつ戻りつしながら、手直しは加えたが。  
 みなさんからのご感想をお待ちしております。  
 


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