|
2000.04.30
同じようなタイトルの、わけのわからない小説もどきの文章もあるようだが、それとはまた別のネタ。はっきりいって、間違い電話ネタがいくつか溜まったので、それで一回ごまかしてしまおう、という卑怯なアイデアである。
我が家には、電話回線が二本引かれている。一本はわたしの部屋に引いてある、わたし専用の電話。パソコン通信だのインターネットだののためにあるといっても良い。他にも、複数の女の子からの電話を、家族に怪しまれないようにうまくさばくため、という対外的な目的もあるのだが、この目的のためにわたしの部屋の電話が使用されたことは、一度としてない。もう一本は、家族のための電話。事件は、この家族で使用するための電話の方で起きた。ってほど大袈裟なもんじゃないんですが。多少の脚色もあるし。
さて、この家族で使う電話の、留守番電話の応答メッセージは、長いこと買ったときのままになっていた。つまり、最初から録音されている「ただいま留守にしております。発信音のあとに、お名前とご用件を……」という女性の声のやつである。一人暮らしの女性なんぞには、便利な機能なのだろうが、この応答メッセージの困るところは、繋がった先がどこなのか、はっきりしないという点だろう。この応答メッセージに対応されると、自分が間違いなく目的の相手に電話をしたかどうか、多少不安になることがあって、結局何もメッセージを入れずに電話を切ってしまう場合がかなりある。もっとも、そういう心配をまったくしない方もいるようで、自信を持ってきちんとメッセージを入れてくれる人もいる。
「山田(仮称)です。先日の××の件、先方と連絡が取れましたので、○月×日を空けておいてください」
メッセージの内容は、この通りだったわけではない。とにかく、山田(仮称)さんからのなにがしかのメッセージが入っていたと思っていただけばよい。この山田(仮称)さんは、妹の友人である。わたしあたりが声を聞いてもわからないが、妹が聞けば友人の山田(仮称)さんであることがはっきりとわかったそうだ。ところが、妹には「先日の××の件」というのに、思い当たるフシがなかった。いったい何のことだろう、と山田(仮称)さんに確認の電話を入れたところ、なんのことはない、山田(仮称)さんは、別の友人に電話をしたつもりでいたのである。つまり、電話機に登録してある電話番号を、間違えて選択してしまったわけだ。たとえば、一番に登録してある友人に電話をするつもりで、二番を選択してしまい、たまたまそれが我が家の電話番号だった、と。しかも運の悪いことに、本来かけたかった相手の家の留守番電話の応答も、電話器に内臓されている「ただいま留守にしております」だったから、山田(仮称)さんは間違いに気がつかなかったらしい。
そういうことがあると、心優しいわが妹は、同じ間違いを誰かが繰り返さないようにと、応答メッセージをきちんと入れることを考えた。だが、自分の声で入れた場合、若いかどうかは別にして女の声である。それによって、適当な番号を選んでいたずら電話をかける輩が、女の一人暮らしだと思い込んで、いたずら電話が増えないともかぎらない。そこでわたしに白羽の矢が立った。明らかに若くない男の声である。いたずら電話が増えるとは思えない。これによって、現在我が家の家族用の電話機は、わたしの声で「はい、瀬楠です」と始まる応答メッセージとあいなった。その結果、先のような間違いはなくなったのだが、それで済んだらおもしろくない。ちゃんと別の問題が湧いて出たのだ。
じつはわたしは、家族で使う電話にはほとんど出ない。出ないようにしているわけではなく、出る必要がほとんどないのである。わたしが家にいる場合、ほとんど必ずといっていいほど、家族の誰かしらが家にいる。わたしが出るよりも前に、他の誰かが電話に出てしまうのだ。わたしが家族で使う電話に出るのは、そう、年に数回、といったところだろう。これが大きな問題となった。
その、年に数回のタイミングでわたしが電話に出ると、ほとんどの場合、電話はすぐに切れてしまうのだ。まるでいたずら電話である。もちろんいたずらなどではない。理由はおそらくこうである。電話をかけて来た相手にとって、我が家の電話がわたしの声で「はい瀬楠です」と繋がった場合、それは留守番電話の声なのである。まさか、めったに出ることのない本人が出たとは思わないから、「あ、留守だ」と思って切ってしまうのである。困ったもんである。それ以来、わたしは電話に出るときに名乗らなくなった。マナーの悪い奴に成り下がったのである。
ありゃ、ネタひとつで終わっちゃったよ。残りのネタは、また別の機会ということで。
|