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[ 小説のようなモノの書き方 ]
まずはいきなり書いてみる
いつ書くか

1999.11.26

 昼間働いていたり学校に行っていたりする場合、書くのはやっぱり夜や休日、ということになるでしょう。って、ここで言いたい「いつ」ってのは、そういうことじゃないんですが(笑)  
 面白いお話を思いついたとします。それを、いつから書き始めればいいか、というはなし。  
 そんなものぁ、いつだっていいじゃねぇか、という意見もあるでしょうが、実はこれがそうでもないんですね。プロの場合には、アイデアを捕まえたら、次は下調べをしたり、情報収集したりする場合もあるようです。なにしろ、それでお金を稼いでいるわけですから、いい加減なことを書くわけにはいきません。まあ、たまに「このぐらい、ちょっと調べればわかるだろうに。なんにも調べてないんじゃないの?」と思うような作家もいるかもしれませんが、通常はそんなことはまずありません。ないはずです。  
 さて、ド素人の場合です。  
 もちろん、ド素人だからいい加減に書いていい、というわけではありません。いや、別にいい加減に書いてもかまいませんが、そうすると「やっぱりド素人は……」という評価しか得られないことになります。「他人の評価なんて、気にしないね」という人の場合でも、何年か過ぎてから自分の作品を読み返したときに「ゲ。俺、すっげぇ大嘘こいてるじゃん」と思うよりは、「おお、この頃から、ちゃんと調べて書いてるじゃん。さすがだねぇ、俺って」と思いたいじゃないですか。  
 だから、いい加減に書くよりは、調べられることはきちんと調べてから書く。これに越したことはないんです。調べものはどうやればいいか、というおはなしは、また別の機会にするとして、とりあえず、調べればわかるようなことは、調べておくに越したことはない、ということだけ覚えておいてください。  
 ところがです。  
 ここにひとつ問題が出てくる場合があるんです。  
 下調べはもちろん大切です。大切ですが、ド素人にとって、もっと大切なことは「書く」ということです。  
 プロの場合には最終的には書かなければならない、という大前提がありますが、素人の場合はそれがありません。つまり、本人の情熱がすべてなんです。プロの場合は、お金をもらってる関係上、飽きちゃったからといってやめるわけにはいきません。たとえ無理矢理にでも、作品としての体裁に、仕上げなければならないでしょう。でも素人の場合は、本人が飽きちゃったら、やめることができるんです。というよりも、たぶん飽きちゃったらもう、やめちゃうでしょうね。  
 だから、飽きる前に書き始めなければならないのです。  
 書き始めてもいないのに、飽きるはずがない、という方もいるかもしれません。ここでは、そういう方の心配はしていませんので、そういう方は、しばらくよそで遊んで来てください(笑)  
 書き始める前に飽きる、というのがどういうことか、というと、ひとつには、頭の中でお話が出来上がってしまって、もう書く気が失せてしまうというのがあります。慣れない文章で無理矢理書いたものと、頭の中にある漠然としたイメージを比べたら、どう考えても、頭の中にある方ができがいいんですよ。漠然としてる分だけ、ソフトフォーカスもかかってますし(笑) そうなると、もうすばらしい作品が完成しちゃったような気分になって、文章に起こす気がしなくなっちゃうわけです。  
 ただ、このパターンの場合、それほど短い時間でこうなってしまうことは、あまりないと思います。一週間や十日ぐらいなら、たぶん大丈夫でしょう。  
 それよりももっと危険なもうひとつのパターンとして、書き手の情熱が冷めてしまう、というのがあります。あるいは、思い付いたアイデアが、それほどでもないような気になってくる、といってもいいかもしれません。  
 これは、一週間か十日ぐらいで起きるようです。場合によっては、一晩寝たら冷めてしまった、というようなこともあるかもしれません。それを考えると、思い付いたアイデアは、一刻も早く文章にしておくことをお勧めします。  
 そんなすぐ冷めるようなアイデアは、文章にするだけ無駄だ、と思うかもしれません。そう思う人は、文章を書き慣れている人です。あるいは、次から次へ、色々なアイデアが湧いてくる人か。書き慣れていない人や、なかなかアイデアが湧いてこない人の場合には、せっかく捕まえたアイデアを、逃がさないようにする努力が必要になるのです。そのために、「すぐ書く」ということを心がけましょう。  
 ただ「すぐ」といっても、思い付いてすぐその場で文章にすることができる状況というのは、通常はまずありえないでしょう。したがって、アイデアを手に入れてから、書き始めるまでには、どうしてもいくらかの時間差が発生してしまいます。これはもう、どうしようもないことです。  
 ですから、この時間差を、可能な限り縮めてあげる。  
 何か思い付いた場合には、遅くともその日のうちには、文章にしてしまった方が、いいかもしれません。前述したように、一晩寝たら冷めちゃう可能性がありますから。どうしてもそれができない場合でも、できるだけ早く文章にする努力をしてください。料理もアイデアも、熱いうちの方がおいしいんですから。まあ、料理の場合、冷たい料理ってのもありますが。  
 素人が小説のようなモノを書く場合、「急がば回れ」とか「急いてはことを仕損じる」ということわざは、とりあえず忘れてください。基本的には「思い立ったが吉日」です。  
 万が一、アイデアが冷めてしまったらどうすればいいか。この場合、料理と違って、電子レンジでチンすれば、すぐに温かくなるってものでもありません。冷めたアイデアを文章にすることほど、面白くないことはありません。それでも一応、とりあえず文章にしてみましょう。途中で投げ出しちゃってもかまいませんから。その間に、別のアイデアが浮かんでくるかも知れないし。冷めた情熱が戻ってくるかもしれないし。そういう可能性だって、充分にあるのです。とりあえず、書いてみるまで、あきらめてはいけません。  
 ただ、どうしても愛(笑)が戻って来ない場合は、もうあきらめましょう。しつこくすると嫌われます(笑) とりあえず、途中まで書いたものを保存して、きれいさっぱり忘れてください。きっぱり忘れて、次のアイデアに取り掛かりましょう。どうせ趣味で書いてる小説のようなモノ。何がなんでも書かなきゃいけない、ってことはないはずです。  
 もちろん、情熱が冷めた状態で書いたモノは、ろくでもないモノである可能性が山ほどあります。しかもその可能性は、かなり高い確率になるでしょう。すばらしいモノになる可能性なんて、極めて低いはずです。だとしても、それはそれでちゃんと別の意味があります。文章を書くことに慣れる、という意味もありますし、アイデアメモとしての効能もあります。あとで読み返してみたときに、そこから別のアイデアが湧いてくるかもしれないし、自分の進歩に感動できるかもしれないし。それよりも、とにかくまず書く、という習慣を身につける、という大きな利点もあります。書きもしないでゴチャゴチャ考えているよりも、さっさと書き始めてしまいましょう。  
 とにかく、思い付いたらすぐに書く。体裁なんぞは、あとからでもなんとかなります。そのために、ワープロを使ってるんですから。修正はいくらでもできます。一刻も早く、書き始めてください。  
 もちろん、そういう形で吐き出した作品を発表するかどうかは、各自の判断です。とりあえず第一版、なんて形で発表してしまうと、一生後悔する可能性もあります。人様に読んでいただこう、という場合には、あまり半端な形の作品は、発表しない方がいいでしょう。それが礼儀ってものです。  


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