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[ エッセイのようなモノ ]
それでも地球は動いている?

2006.02.07

 かなり昔のことになるが、どこかの国で誰かが「それでも地球は回っている」と言ったとか言わなかったとか。もちろん、その人が日本人でなければ、日本語で「それでも地球は動いている」と言ったわけではなく、その国の言葉でいったのだろうが。まあ、どこの誰がどこの言葉で言ったのかはどうでもいい。今では通説となっているが、地球は動いているのである。これを地動説という。  
 とはいえ、空を見上げて、お日様やお月様やお星様の動きを見ていると、どう考えても動いているのは空の方で、地面だとはとても思えない。その方が自然なような気がする。だから大昔は、地面の方ではなく、空の星だの太陽だのが動いている、と考えられていた。というか、見た目そのように見えるのだから、だれも疑問は持っていなかった。これを天動説という。  
 実は、いまだに天動説を唱えている人たちもいるらしい。そういう人たちが、地面はあくまでも平らで、その下には巨大な亀だの象だのがいて、上に半球体のドームがあって、そこをお日様だのお月様だのが動いている、と考えているのかどうかは、わたしも知らない。だが、空に見えるすべての星が半球体に張り付いているのだ、とさえ言い張らなければ、動いているのは他の星の方で、地球は止まっているのだ、と主張するのは、実は難しくない。  
 たとえば、二つの物体AとBがあったとしよう。Aから見るとBが動いているように見え、Bから見るとAが動いているように見える。しかし実際には、AもBも両方とも動いているとする。  
 このとき、両方の物体が動いている、と認識するためには、最低でもあとひとつ、動いていない物体が必要になる。動いていないひとつがあるから、他のふたつが動いていることを確認できるのである。  
 通常は、観察者本人が動いていない、という認識のもとで観察するわけだが、ここでは論理上の話なので、観察者は存在しないことにする。  
 そこで、第三の物体Cに登場してもらおう。ところがこのC君、間抜けな奴で、ついうっかり動いてしまった。しかも、Aとまったく同じ動きをしていたとする。そうすると、どうなるか。Cは動いていないはず、なのだから、それと同じ動きをしているAも動いていないことになってしまうのである。その結果、最初に登場したAとBのうち、Aは止まっていて、Bは動いている、ということになってしまうのだ。実際には両方とも、いや、Cも含めてみっつとも、動いているにもかかわらず、だ。  
 慌てて、第四と第五の物体DとEに登場してもらう。で、こいつらがまた、止まれといっておいたにもかかわらず動いてしまった。しかも、今度はBと一緒に。  
 この時点でACチーム対BDEチームで2対3。その結果、多数決でBDEが勝つかというと、そうはならない。一度AとCが止まっている、と思い込んでしまったので、Bと同じ動きをする物体、DとEが現れた、と考えてしまうのである。実はAもBもCもDもEも、みんな一斉に動き回っているのに。  
 ここから先は、いくつ物体が増えて、どんな動きをしようとも、AとCは止まっていることになっているので、動いているのは他の物体、ということになる。実際には、AもCも動いているのに、だ。  
 そこに、第……何番だか知らないが、新たな物体が登場したとしよう。Z(仮称)である。この物体も、AとCから見ると、明らかに動いている。その他の物体から見ても動いている。しかし、実は彼こそが、待ちに待った本当に動いていない物体君だったのである。  
 ところが、残念ながら、すでに動いていないのはAとC、ということになってしまっているので、悲しいことにZ(仮称)君も、動いていることにされてしまうのである。  
 こうなってくると、そもそもZ(仮称)君が動いていないということを、どうやって確認すれば良いのか、ということだ。はっきりいって、確認のしようがないのである。  
 そして、最初の話題に戻る。  
 動いているのは、地球か、それとも他の星か、ということだ。  
 通常は、太陽の周りを地球が回っていることになっている。また、自転というやつで、地球はコマのようにクルクル回っているのだ、といわれている。  
 ホントにそうか?  
 視点を変えた瞬間に、動いているのは地球以外のすべての星で、地球はまったく動いていないと言えてしまうのではないか?  
 まあその場合、他の星の動きがすっごく複雑になってしまうのだが、そんなことは知ったこっちゃない。俺ぁ地べたが動いてるなんて、絶っ対に信じねぇぞ。  



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