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[ 小説のようなモノの書き方 ]
まずはいきなり書いてみる
書くことがない場合(その2)

1998.11.12

 「書くことがない場合」では、とりあえず朝起きてからのことを書けばいい、といいましたが、「それじゃあ小説っぽくない。もっと小説っぽいものを書きたい」という方もいらっしゃるでしょう。そこで、書くことがなくても、より小説っぽいものが書ける方法をお教えしましょう。  
 恐い話しを書くんです。つまり、怪談。ホラーじゃなくて、あくまでも怪談です。  
 誰でもひとつやふたつは、恐いはなしを知っているでしょう。夏の夜に、百物語ってほどではないにしろ、恐い話しを友達とした経験はあるのではないでしょうか。自分がはなしたことがなくてなくても、人から聞いたこともあるでしょう。それを、人に直接はなすのではなく、文章にしてしまえばいいのです。  
 こいつの利点は、まずおはなしは最後までできている、ということ。おはなしはすでにできていますから、どんなおはなしにしようか考える必要がありません。考えなければいけないのは、書き出しや展開、終わり方ぐらいでしょう。あとは、文体をどうするか。  
 そのあたりのことに関しては、悩む必要はありません。もともと人に話す怪談を文章にするだけですから、そのまま書けばいいんです。たとえば、こんな感じで。  
 
 そのころわたしは、大学に入学したばかりでした。  
 (中略)  
 その後、彼がどうなったのか、わたしは恐ろしくて、彼に連絡を取っていません。  
 
 もちろん、セリフはセリフとして表現してください。色々な描写だって、きちんとやってみましょう。このあたりは、凝ったことをやろうとすればいくらでも凝ることができますが、最初はあまり力まないで、とりあえず小説っぽければよしとしましょう。後から修正はいくらでもできますから。  
 次の利点は、それほど長くはない、ということ。これは大きいです。  
 どこかのホラー大賞に応募しよう、というのなら別ですが、怪談は基本的に短いほうがおもしろいようです。多くて原稿用紙二十枚、少なければ十枚以下にまとまるのではないでしょうか。  
 なんにしても、ド素人がとりあえず書く小説のようなモノとしては、あまり長いものはおすすめできません。なんせ、途中で飽きちゃう可能性がありますから。場合によっては、二十枚のお話しだって、結構書くのは大変なんです。  
 だから最初は、少し短いかな、と思う程度の長さでもかまいません。後から少しずつ描写を加えていったり、修正していけばいいんですから。で、この修正する、という作業には、当然「読み返す」という作業が入るわけですが、一度自分が書いた作品を読み返すときに、やたら長いとこれがなかなか大変なんです。ところが、十枚から二十枚ぐらいならば、それほど辛くはなくなります。  
 いくつも書き溜めて、冒頭にプロローグのようなものをつけて、百物語かなんかをやっているようにしてみるのも手です。そういうやり方をしている作家の方も大勢いるようですし。  
 ってことで、とりあえず書いてみる作品としては、怪談は結構おすすめです。もちろん、書いた作品が面白くなるかどうかの責任は持てません。だいたい、恐いはなしを文章にして、読み手を怖がらせるっていうのは、かなり難しいことですから。  
 書いているときには恐く感じたのに、読み返してみたらあまり恐くない、ということも多いと思います。そんなときでも、せっかく書いたものは捨ててはいけません。それを第一稿として、順に修正版を作っていけばいいんです。とか言ってて、改定版を全然書かない奴もいますが(笑)  
 ただ、怪談を書く、という作業にも欠点はあります。  
 まず、恐いおはなしが苦手な人には不向きだということ。  
 それほど苦手ではなくても、夜に書くことが多い人には、ちょっと辛い場合があります。  
 そして、多分大丈夫だとは思うのですが、下手をすると呪われてしまうかもしれない、ということ(笑)  
 念のために、お祓いをしておくことをおすすめします。  


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